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【自由研究】COVID-19の新規陽性患者数の減少を「休日」「外出自粛」と「PCR検査受検者」との関係から検証してみる。(3/3)

結論・考察パート編

 15秒でわかる本稿のポイント

  • 休日(土・日)になると、PCR検査受検者数が減る傾向にあるので、新規陽性患者数も減る傾向にある可能性。しかし「なぜ、休日になるとPCR検査の受検者が減るか」については、更なる検討が必要。
  • 「外出自粛が強まると、PCR検査受検者が増え、新規陽性患者数が増える傾向にある」可能性。更なるデータの蓄積と詳細な公開データを入手したのちに、改めて更なる検証を行うことが課題。
  • 推計の説明力としても十分に高くなく、この話は「話半分未満」で捉えるのが良。

目次は以下の通りです。

 

 

本稿では、
「休日はPCR検査受検者数が減るので、新規の陽性患者数が減少している」かという問いに基づいて、これまで

  • 「休日」「外出自粛の動き」←→「PCR検査受検者数」の関係
  • PCR検査受検者数」←→「新規陽性患者数」の関係

について分析を行ってきました。本パートでは、この分析結果についての結論と考察を行います。分析結果の詳細については、前の記事をご確認ください。
Result details are in previous article.

 

【4.結論及び考察】Conclusion and Discussion

(1)分析結果からの結論

まず、今回の分析の前提となる仮説1「何らかの理由によりPCR検査受検者が減るので、新規の陽性患者数が減少している」については、回帰分析の結果、「PCR検査受検者数が1人増えると、新規陽性患者数も0.09人増える傾向にある」ことが分かりました。

この点に、仮説2の「休日だとPCR検査受検者数が減るのではないか」という検証の中で明らかになった「休日(土・日)になると、PCR検査受検者数は約250人減る傾向にある」という点を加味すると、「休日(土・日)になるとPCR検査受検者が減る。PCR検査受検者が減ることで、新規の陽性患者数も減る傾向にある」可能性が考えられます。

 

一方、外出自粛の動向については、仮説3「外出自粛の動きでPCR検査受検者数が減るのではないか」という検証の中で、「外出自粛が強まると、PCR検査受検者数は約10人増える傾向にある」という点が示唆されました。
このことから、「外出自粛が強まると、PCR検査受検者が増え、新規陽性患者数が増える傾向にある」可能性が考えられます。

 

(2)考察と課題

最後に、今回の検証から導き出された結論に対する考察と、結果から見える課題について示したいと思います。

本検証結果の妥当性について

まず、今回の検証の妥当性については、仮説1の「新規陽性患者数に対するPCR検査受検者数」は、50%程度の説明力を持っており、今回の分析の中では比較的説明力が大きい結果となっています。そのため、PCR検査受検者数と新規の陽性患者数の間にはある程度の妥当性のある関係性があると考えられます。一方で、仮説2、3の「休日」「外出自粛の動き」と「PCR検査受検者数」は30%未満の説明力となっており、話半分未満で捉えてもらうのが良いと考えます。

 

なぜ休日になるとPCR検査受検者数が減るのか?

今回の仮説2「休日」と「PCR検査受検者数」との間の検証結果から、
休日(土・日)になると、PCR検査受検者数が減る傾向にあるので、新規陽性患者数も減る傾向にある可能性は示唆されました。
しかし、土日であることと新規陽性患者が増えるかどうかの直接的な因果関係はないと考えることが自然です。
そのため「なぜ、休日になるとPCR検査の受検者が減るか」については、更なる検討が必要だと考えます。
例えば、 A. 人々の行動として、休日になると(自発的に)受検しなくなるのか?
     B. 検査の体制として、休日になると対応可能な人数が減るのか?
ということが考えられますので、それぞれデータに基づいて詳細な分析を行っていくことが求められます。

 

なぜ、外出自粛が強まると新規陽性患者数が増えるのか?

また、今回の検証3「外出自粛」に関する検証結果からは、想定と真逆の結果として「外出自粛が強まると、PCR検査受検者が増え、新規陽性患者数が増える傾向にある」可能性が示唆されました。

この点については、今回扱ったデータと分析手法上の問題があると考えられます。

外出等の原因となる行動から陽性判明までの間には、潜伏期間というタイムラグがあります。今回は「外出から6日後に発症し、PCR検査を受け陽性が判明する」という仮定に基づいて分析していますが、現実には2、3日で陽性が判明する人もいれば、2週間後に判明する人もいます。

出自粛の社会的ムードが強まり、外出者数が減っている一方で、数日〜2週間前に感染した人々の陽性が現在になって判明する動きが続いていることが考えられます。

そのため、データ上は、外出自粛が強まり外出者指数は減少するものの、数日〜2週間前の行動を原因として新規の陽性患者数が増えるという結果になっていると推察されます。

 

そして、特に重要な課題として、今回の検証では、わずか66日分のサンプルデータしか扱っておらず、また、扱ったデータについても更に詳細なデータを活用する余地が残っています。
そのため、検証結果については、統計的な信頼性に欠けるのも事実だと思います。
今後、更なるデータの蓄積と詳細な公開データを入手したのちに、改めて更なる検証を行うことが課題となると考えます。

また、今回は筆者のRの勉強を兼ねて、試行的な分析を行ってきましたので、分析手法についても他の分析手法を用いることが適切である可能性があります。

 

そのため、今回の検証結果については、話半分未満で捉えていただけると幸いです。

本稿では、つらつらと「休日はPCR検査受検者数が減るので、新規の陽性患者数が減少している」かという問いについて検証を行ってきましたが、要点をまとめたものをSlideShareにアップロードしましたので、レビューやコメント・ご質問等いただけると大変嬉しいです。
SlideShareの方には、Appendixとして変数間の相関表もお付けしています。)

 

 
 

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