【自由研究】COVID-19の新規陽性患者数の減少を「休日」「外出自粛」と「PCR検査受検者」との関係から検証してみる。(2/3)
分析結果パート編
15秒でわかる本稿のポイント
- PCR検査受検者数が1件増えると、新規陽性患者数は約0.09人増加する傾向にある
- PCR検査日が「休日(土・日)」であると、PCR受検者は約254人減る
- 外出自粛が強まる(=外出者指数が減る)と、PCR受検者が約10人増えてしまう
目次は、以下の通りです。
前の記事の続きとして、本稿では
「休日はPCR検査受検者数が減るので、新規の陽性患者数が減少している」かという問いに基づき、
の分析結果をまとめていきます。
本稿では、3つの仮説に基づき分析を行っています。
仮説1「PCR検査受検者数と新規陽性患者数」では、ある日のPCR検査受検者数と、同日の新規の陽性患者数について、東京都が公開しているデータを元に、
「PCR検査受検者数と、同日の新規の陽性患者数の間に何らかの関係があるか?」
という点を、相関分析(Correlation Analysis)によって分析します。
そして、「PCR検査の増減が新規患者数の増減につながるのか?」という点を単回帰分析(Single Regression Analysis)によって分析します。
仮説2「休日とPCR検査受検者数」、仮説3「外出自粛の動きとPCR検査受検者数」では、
PCR検査実施日について、「その日の曜日(休日かどうか)及び、実施日6日前の外出自粛の動きは、その日のPCR検査受検者数に影響を与えるのか?」という点を重回帰分析(Multi Regression Analysis)によって分析します。
研究背景、分析方法・データの詳細については前の記事をご確認ください。
Introduction, Methods and Data are detailed iaa previous article.
【3.分析結果】Results
(1)データ間の相関関係
データ同士が与える影響を分析する前に、そもそも関係のないデータを分析しても意味がありません。そのため、まずはデータ間の相関関係を見てみます。
今回の検証に用いるデータ(変数)間の相関関係を以下に示します。
矢印の上に相関係数を示しています。相関係数を見ることで、0.7〜1.0で「強い相関あり」、0.4〜0.7「相関あり」、0.2〜0.4「弱い相関あり」、0.0〜0.2「相関なし」とデータ間の関係性の強さを見ることができます。
それぞれ正と負の方向があります。例えば、気温が1度上がるとビールが1杯売れる場合は正の相関。気温が1度上がると、鍋焼きうどんの消費が1杯減る場合は負の相関です。
仮説1「PCR検査受検者数と新規陽性患者数」では、0.730という比較的高い正の相関関係が確認できます。このことから、PCR検査数が増えると、新規の陽性患者数も増える可能性があると考えられます。
仮説2「休日とPCR検査受検者数」では、月曜日・休日(土日)にそれぞれ0.20、-0.25という弱い相関関係が確認できます。月曜日であるとPCR検査受検者数が増加し、休日(土日)だとPCR検査受検者数が減少する可能性があります。
平日(火〜金)であることとPCR検査受検者数の間には相関が確認できませんでした。
仮説3「外出自粛の動きとPCR検査受検者数」では、-0.48という負の相関関係が確認できます。このことから、外出自粛の動きが強まり外出者が減ると、PCR検査受検者数が増えるという可能性があると考えられます。これは、当初想定していた、「外出自粛の動きが強まり外出者が減ると、PCR検査受検者数が減る」という正の相関関係とは逆の結果となっています。
相関関係が見られなかった平日(火〜金)のデータについては意味がないので、あらかじめ除外した上で、以下で回帰分析を行ってみます。
(2)仮説1 PCR検査受検者数と新規の陽性者数の関係
仮説1「何らかの理由によりPCR検査受検者が減るので、新規の陽性患者数が減少している」という仮説についての検証結果を示します。
仮説1は、本稿のテーマである休日・外出自粛の動きとPCR検査受検者数、新規陽性者の関係を見る前提として、そもそも、PCR検査受検者数と新規の陽性者数って関係あるんだっけ?という点を明らかにするものです。
新規陽性患者数を目的変数、PCR検査受検者数を説明変数として、単回帰分析した分析結果と回帰式を以下に示します。
分析結果からは「新規の陽性患者数」を説明する要因として、「PCR検査受検者数」を考えてみた場合、統計的に有意な関係があるという結果が確認できました。
つまり、PCR検査を受検する人が多くなれば、新規陽性患者数は増加する傾向にあるといえます。
得られた回帰式は
y[ある日の新規陽性患者数] = 0.09×[PCR検査受検者数] + 16.64
でした。
PCR検査受検者数が1件増えると、新規陽性患者数は約0.09人増加する傾向にある。また、PCR検査受検者数以外の要因により、新規陽性患者数は16.6人増加する。
ということが明らかになりました。
この推計結果の説明力(Adjusted R-squaredというところを見ます)は0.525で、母集団(世の中)の52.5%程度を説明できると言えます。話半分程度には、捉えることができると思います。
(3)仮説2、3 休日と外出自粛と、PCR検査受検者数の関係
仮説1では、ある日のPCR検査受検者数と新規の陽性患者数に間には有意な関係があり、PCR検査を受ける人が多くなれば、新規陽性患者数も増える傾向にあるということがわかりました。
続いて、本検証のメインである「休日だからPCR検査をうける人が減っただけなのではないか?」という点について検証を行います。
仮説2では「休日だとPCR検査受検者数が減るのではないか」、仮説3では「外出自粛の動きでPCR検査受検者数が減るのではないか」という点を明らかにします。
「PCR検査受検者数」を目的変数とし、休日であることとして「月曜」「休日」のダミー変数、「外出自粛の動き」として「PCR検査日−6日前の前年比外出者指数」を説明変数としています。
これらの変数を重回帰分析した分析結果を以下に示します。
得られた回帰式は、
y[PCR検査受検者数]=164.3×[月曜日であること]−254.9×[休日であること]−10.53×[PCR検査日−6日前の前年比外出者指数]+1445.8
でした。
この推計式では、「休日」「外出自粛」以外の要因により説明できる誤差が、約1445人分となっています。
なお、この推計の説明力(Adjusted R-squared)は0.276で、母集団(世の中)の27.6%しか説明できておらず、話半分にも満たないですね。
仮説2「休日だとPCR検査受検者数が減るのではないか」
仮説2の「休日」と「PCR検査受検者数」の間には、統計的有意差が確認されました。
つまり、このことから外出自粛の動きが同じくらいな日同士を比べた場合では、
PCR検査日が「休日(土・日)」であると、PCR受検者は約254人減る関係にあることが分かりました。
一方、PCR検査受検者数との間に若干の相関関係が確認されていた「月曜」については、有意差は確認されませんでした。
仮説3「外出自粛の動きでPCR検査受検者数が減るのではないか」
仮説3の「外出自粛の動き(前年度比の外出者指数)」と「PCR検査受検者」の間にも、統計的有意差が確認されました。
つまり、平日・休日関係なく、ある日同士を比べた場合に
「外出者指数」が1単位増えると(つまり、外出者が増える=外出自粛が弱まると)PCR検査受検者は約10人減る関係にあることが分かりました。これは、言い換えると、外出自粛が強まる(=外出者指数が減る)と、PCR受検者が約10人増えてしまうということです。
なぜ、外出する人が減るとPCR検査受検者数が逆に増えてしまうのでしょうか?
この点は、結論と考察パートで考えてみたいと思います。
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