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(心に浮かんだ)「考え」を書いたもの。

【つんどく】「ラオスのいったい何が分かるというんですか?」−やっぱり、ハルキはすごかった。

あの村上春樹ラオス本を書いた!?

11月21日(土)に村上春樹さんの紀行文集『ラオスにいったいなにがあるというんですか?』が発売された。

まさか、あの村上春樹ラオスについて本を書くなんて。 

そんなことをされたら、ラオスの知名度が上がって、ハルキストの皆さんが聖地巡礼に来てしまうかもしれない。やれやれ。
なんてことを思ったり、思わなかったりしている。
それにしても『ラオスにいったいなにがあるというんですか?』なんて。
なんという挑戦的なタイトルなのだろうか。本を読むまでは、正直いうと「あなたに、ラオスのいったい何が分かるというんですか?」なんてことを思っていた。

 

文中によると、このフレーズは、村上さんがラオスに飛ぶ途中で知り合いのベトナム人に言われた言葉らしい。
「ええ!?ベトナムじゃなくて、ラオスに行くのかい?」とか
ベトナムに無くて、ラオスにあるものなんて、そんなものがあるのかい!?」 なんて、ベトナムお兄さんはその時、思われたに違いない。

 

ラオスにいったい、何があるのか?

本の中で、村上さんは特にその答えを出しているわけではない。 

ただ、「時間はたっぷりあるのだから」という表現は何度か出てくる。
もしも、僕が他の人に「ラオスって、いったい何があるの?」と聞かれたら、僕もきっとこう答えるだろう。
「何も無いのだけれど、時間はある。何もないからヒマになるってことは、ごく当たり前のことなのだろうけど。」

  

ラオスにいったい何があるというのか?−そう。ラオスには何も無い。
あるのは、あなたが自由に使ってよいたっぷりの時間。
おそらく何も無いと言ったら、きっと語弊があって、
ラオス出身の人やラオス関係者の皆さんに怒られてしまうかもしれないけれども。
だけど、たとえば、タイは微笑みの国、バンコク、アユタヤ、プーケット…、ベトナムには目が回るほど多くのバイク、おなじみのフォー、カンボジアにはアンコール・ワットなど、国の名前を聞いただけで思い浮かぶイメージがある。ただ、ラオスは周りの国に比べると、どうもぱっとしない。

正直それは仕方が無いことだとも思う。僕らが普段、この日本で生活する中でラオスのことを見聞きしたり、意識したりすることは、ほとんど無いのだから。

 

何も無いからこそ、自分のモノサシでモノで考えられる

村上さんはこの本の中で、ラオスではゆっくりと時間をかけて周りを見ることが出来て、なおかつ出来合いのモノサシ(考え方の尺度)を当てはめることが出来ないから、本当に“自分の目で見て”、“モノを考える”ことが出来ると言っている。いや、確か、そんなことを言っていたと思う。 ラオスという見知らない国だからこそ、今までの既存の価値観だとか判断基準が良い意味で通用しない。

 

確かに、なぜかラオスでは、何か物思いにふけったり、じっくりと何かを考える時間が増える、と感じる。これは一度、ラオスに行ってみると分かってもらえると思う。僕が思うに、日本のせわしない日々を過ごし、時間に追われる中で、僕らはついつい、自分で見た事実を元に、何をじっくりと考えるという行為を忘れてしまいがちになってしまうのではないだろうか。− 周りに飛び交う情報だとか、周囲の人間の考え方についつい流されて楽をしてしまうのでないだろうか。

 

だけれど、そう。ラオスには時間がある。メコン河に流れ行く小舟とペットボトル、平日昼間から軒下に集まってお酒を飲んでいるおじさんたち…など、目の前にある世界から刺激を受けて、頭の中で思うままに、色んなことに思いを巡らすことができる。ゆったりとした時間や、メコン河という雄大な自然と一緒に生きる人々の生活や信仰、目の前の世界を見て、思うままに何かを考えるための時間がある。目の前に広がる思考のタネを見つけて、「コレはきっとこういうことなのだろう。」 と必死にXとYをつなげて解釈をしようと考えることができる。

 

村上さんがラオスのリズムの中で、何を得たのか。それは定かではない。村上さんはそれが旅行の醍醐味だと言っているのだけれど、そもそも不可視なもの(時間)は、外からは見えないものなのだし、「ラオスに何があるのか」という質問の答えは、行った人だけが見つけられる、何か隠された宝物のようなものなのかもしれない。

 

さすが世界の村上春樹の感性と洞察力です。

僕も、何度もラオスには足を運んでいるけれども、ラオスに何があるのかはっきりとは分かっていなかった。この本を読んで、少しは整理することができたに違いない。たった一度の訪ラオスで、ラオスという国のリズムや雰囲気を感じ取って、しかも上手く調和しているのは、さすがやっぱり世界の村上春樹だと思う。

 

この本は、紀行文集なので、ラオス以外にも村上春樹さんが執筆活動を行った世界各地の場所について書かれています。なので、ラオスに馴染みのある人も、またラオスに行ったことが無い人、はては興味の無い人にもぜひ一度手に取ってみてもらいたい一冊です。