ideagram

(心に浮かんだ)「考え」を書いたもの。

【自由研究】有給取得を義務化したらワークライフバランスって本当に向上するの?

15秒でわかる本稿のポイント

  • 有給休暇取得義務化でワークライフバランスは向上するのか?
  • 男性は仕事の時間が減って、自由な時間が増えている
  • 女性はなぜか仕事の時間も増えてないし、自由な時間も減っている
  • それって、家庭内でのお仕事に変わっているだけじゃない?

目次は以下の通りです。 

  

【はじめに】働き方改革により有給取得が義務化

はろー。皆さんこんにちは。ideagramです。
皆さま、以下のニュースはご存知でしょうか。
2019年4月1日より、いよいよ「働き方改革関連法」が施行され、企業は社員に少なくとも5日間の有給休暇を取得させることが義務化されました。

news.mynavi.jp

働き方改革の波により、5日も有給が取れないブラック企業にお勤めの皆様におかれましては、義務化されることによりお休みが増えるようになります。(10日以上の有給が付与されている場合ですが。)

私のように、会社から夏休みの名目で5日程度の有給を取得させられ、かといって好きなタイミングでは休めないため、毎年付与される有給は消化しきれず単に消滅していく有給取得が有名無実化している、そんなオフホワイト企業にお勤めの皆様にはあまり影響が少ないお話ではあります。

 

働き方改革としてワークライフバランスの向上が推進されている昨今、サラリーマンとして日々、ワークとワークのバランスの追われている私はふとこういう疑問を感じました。 

「有給取得義務化で休みが増えると、ワークライフバランスは向上するのか?」

 

有給取得促進によるワークライフバランスのイメージ

有給取得促進によるワークライフバランスのイメージ

(図はいらすとやさんよりお借りしたものを元に作成しています。)


【研究仮説】
有給休暇が増えると、ワークライフバランスは向上するのか?

研究対象は「生きるための時間」「義務的な時間」そして「自由に使える時間」

上の疑問に対して、今回は有給を多く取っている人と、あまり取れていない人の生活行動の違いを見ることで、休みが少ない人に比べ、休みが多い人はどれくらい自由な時間を多く取れるようになるのかを調査してみました。

 

ワークライフバランスの分析は厄介でして、ワークライフバランスのうち、殊にライフ(生活)部分の“質”向上を問題の対象にするのは難しいです。質の高低については、求めるものが満たされるか、そうでないかに依るため、人それぞれの捉え方ですので定義が難しいです。
そのため、本稿では、量的な部分に着目し、生きるために必要なことと義務的なこと以外の、自由な時間がどれだけ増えたかに着目します。

 

研究方法 平均的な1日の生活時間についての量的データを分析

今回扱ったデータは平成28年の「社会生活基本調査」です。平均的な1日の生活時間について、有給取得日数別に集計しているデータをもとに分析を行います。
サンプルサイズは、以下の通りです。

  男性 女性
0日 9,242  6,308
1~5日 19,348  13,827
6~10日 15,674  14,274
11~15日 8,652  8,536
16~20日 8,185  6,716
21日以上 4,441  3,000

 

生活時間の区分については、厚生労働省の区分を用います。
一次活動は、睡眠や食事、身の回りの用事といった「生きる上で必要な活動」です。
二次活動は、通勤・通学、仕事、学校、家事、介護・育児、買い物といった「社会生活上、必要な活動」です。いわば、ワークライフバランスの「ワーク」に該当する活動です。
三次活動は、テレビ、くつろぎ、自己学習、趣味、スポーツ、ボランティア等の社会的活動などなどの「個人の裁量で自由に使える時間」です。ワークライフバランス「ライフ」に該当する活動です。 

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生活行動の区分(厚生労働省「社会生活基本調査」に準拠)

 

【分析結果】有給休暇取得日数別に1日の生活行動を見てみた

以上の区分に沿って、有給取得日数別の生活行動を見てみます。
次のグラフは、個人が1日の生活行動時間を、一次活動・二次活動・三次活動にどれくらい費やしているかを示すグラフです。横並びの棒グラフは左から右に、有給休暇取得日数が少ない方から多い方に並んでいます。
(左:0日1~5日6~10日11~15日16日~20日21日以上:右)

 

有給休暇取得日数別 1日の生活時間(男女別)

有給休暇取得日数別 1日の生活時間(男女別)

(※図が小さい場合は、タップorクリックしていただけると拡大できます。)

 

今回は、ワークライフバランスについて分析するため、仕事等に関する二次活動(ワークに関する時間)と、自由な生活時間に関する三次活動(ライフに関する時間)に割いている時間の傾向に注目します。

まず、男女間で傾向に差があることが確認できます。

男性の場合

男性では、二次活動(ワークに関する部分)を見てみると有給取得日数が多い人ほど、仕事等に割く時間が減少していることを確認できます。
有給取得日数が増えることで、ワーク部分の割く時間が減ることにつながると考えられます。
また、三次活動を見ると、有給取得日数が多い人ほど個人の裁量で使える自由な活動に多くの時間を割いている傾向が確認できます。

つまり、男性では、「有給取得日数が増えることで、仕事等に関する時間的な比重が減り、自由な生活時間が増えている」と言えます。

 

女性の場合

しかし、女性では異なる傾向が確認できます。
二次活動に注目してみると、女性では、有給取得日数が増加しても、仕事等に関する時間はほぼ横ばいであり、少なくとも減少している傾向は確認できません。
これは、有給取得日数が増えて、外での仕事の時間が減って生み出された余剰の時間が、家事、育児、買い物といった家庭内労働の時間に振り替えられているということが原因として起きているかもしれません。
また、三次活動についても、有給取得日数が多い人ほど、個人の裁量で使える自由な時間は横ばい、むしろ若干少なくなっている傾向にあります。

このことから、女性では「有給取得日数が増えても、仕事(家庭の仕事含む)に関する時間的な比重は変わらない。自由な生活時間も増えていない。」と言えます。

 

 

 

【結論】有給休暇取得だけだと、ワークとライフはバランスしないんじゃない?

さて、最初の問いである「有給取得義務化で休みが増えると、ワークライフバランスは向上するのか?」という疑問に対する答えとしては・・・

有給取得日数が増えると、仕事に使う時間は減少するため、個人で自由に使える時間が増える。

しかし、仕事で使う時間が減ったとしても、

身の回りの用事や家事・育児等の家庭で働く時間が増えるだけで、個人で自由に使える時間が増えることにはつながらないこともある

 という、さも当たり前のことが答えとして導き出されました。

 

今回の結果で導き出された、この男女差については男女間での家事分担の問題も関係していると考えられます。

男性については、休みを増やすことでライフの充実につながる可能性がありますが、女性については、単純に休みを増やすだけではダメで、家事・育児の負担を減らす手立てが必要になると考えられます。
働き方改革」は外で働く仕事だけでなくて、家庭内労働についても意識していく必要があるのではないでしょうか。

 

さて、
今回は一次活動、二次活動、三次活動とまるめて分析しておりますが、今後、生活行動について詳細に分析することで、有給取得日数が増えることで、どのような生活時間が増えるのかの傾向がより明らかになると考えております。

グラフ化はできておりますので、文章が出来次第アップしたいと思います。

それでは。

  

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