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【自由研究】桜開花に気も漫ろ?COVID-19警戒の中、3月3連休で外出した人は増えたのか?

 15秒でわかる本稿のポイント

  •  2月から花見自粛呼びかけ(3/4)以降、人々は3月の3連休(3/20-22)で「気を緩ま」せて、外出してしまったのか?
  • 自粛呼びかけは要請直後の3/7-8には一定の効果があったものの、翌週3/14-15、3連休(3/20-22)では再び来訪者が増加。
  • 3月3連休での外出者は、COVID-19感染への警戒感が強まる前の2月3連休(2/22-24)と同じレベルまで逆戻りか。
  • 3連休手前での「気の緩み」と多くの人々が外出してしまったのは、多分事実です。

目次は以下の通りです。

 

 【1. はじめに Introduction】

「気の緩み」から感染拡大?桜に誘われて、人々は外出してしまったのか?

2020年4月、暖冬の影響か早めに咲いた、東京の今年の桜はすでに葉桜に変わってしまいました。現在、新型コロナウィルス(SARS-CoV2)による感染症(COVID-19)が東京でも本格的な流行が進んでいます。

4月11日には都内で197名の新規感染者が発生し、4日間連続して感染者数の最多を更新し続けています。4月に入ってからは、陽性が確認された新規感染者数・入院者数が急激に増加しています。

朝日新聞デジタル「新型コロナウイルス感染者数の推移」4月に入ってからグラフの傾きが大きくなり、感染増加の勢いが増していることがわかる。

朝日新聞デジタル新型コロナウイルス感染者数の推移」


グラフの縦線は3月30日時点の位置を示しています。陽性者数、入院・退院者数の棒グラフを見ると、3月30日以降にグラフの傾きが大きくなっており、感染拡大の勢いが増していることがわかります。 

この感染者数の拡大について、時事通信社(4月7日)は、3月後半からの感染者数の増加の原因として、

国内の感染者数は3月後半から急増。帰国者の増加や同月20日からの3連休での「気の緩み」が響いたとみられる。

 としています。

(引用元)JIJI.com「安倍首相、新型コロナ感染者急増に危機感 緊急宣言へ慎重論押し切る」https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040600893(2020/4/11確認)

 

確かに、3月20日〜22日の3連休の時期は、折しも東京では3月14日に開花した桜が22日頃には満開の時期を迎えており、テレビやニュースが伝える桜の便りに気も漫ろに外出する人々が増えたことは十分に考えられます。

一方で、東京都知事による花見自粛の呼びかけは3月4日に出されており、早期から人々に警戒を呼びかける動きはありました。

そこで本稿では、果たして3月3連休の時期に「多くの人々が『気を緩ま』せ、自粛要請がある中で外出してしまったのか?」を明らかにしたいと思います。

 

 

 

 
【2. 研究仮説 ResearchQuestion】

桜咲く3連休期間中、人々は外出を控え続けたのか?

本稿では「3月の3連休(3/20-22)で人々の気は緩ませ、人々は外出自粛を止めてしまったのか?」という仮説を対象として考察を行います。
この仮説には「気の緩み」「外出自粛を止めたのか?」という2点の問いが含まれていると考えます。

1点目の「気の緩み」については、都知事による3月4日の花見自粛呼びかけ以降、もし、3連休中も外出自粛を継続していれば、自粛要請以降の外出者数は減少し続けているはずです。
そこで、都知事による花見自粛の呼びかけ(3/4)以降の3月中、人々は外出自粛を続けたのか」という問いを設定します。

また2点目の「外出自粛を止めたのか?」については、もし外出自粛が行われていれば、都内を出歩く人々、つまり都内に来訪する人々の数が減少するはずです。
そこで「3連休(3/20-22)期間中に都内への来訪者が減少しているのか?」という問いを設定します。

改めて、本稿で対象とする問いを以下に示します。

  1. 都知事による花見自粛の呼びかけ(3/4)以降の3月中、人々は外出自粛を続けたのか?
  2. 3月の3連休(3/20-22)期間中に都内への来訪者が減少しているのか?

 

【3. 分析方法・データ Methodology&Data】

スマホ位置情報データを基にした滞在人口推計値から都内来訪者数の動きを見てみる

今回は、人々の外出自粛の動向について分析を行うため、3月3連休(3/20-22)前後での都内への来訪者数の推移を分析しました。
人々の動きに関するデータは、スマートフォンの普及により位置情報データより詳細に取得することができるようになってきています。
例えば、COVID-19の流行に伴い、Googleやヤフー・データソリューションも無償でデータ公開しています。

(参考)GoogleCOVID-19 Community Mobility Reports

ヤフー・データソリューション:東京23区滞在人口推計値の日別遷移(全体・来訪者・住人)

 

今回は、都内への来訪者数のデータが欲しいため、ヤフー・データソリューションが提供している「東京23区滞在人口推計値の日別遷移(全体・来訪者・住人)」のオープンデータを使用しました。

「東京23区滞在人口推計値の日別遷移(全体・来訪者・住人)」では、2月から4月にかけての日々の滞在人口(住民・来訪者)を23区別に見ることができます。
本稿では、3連休時の人々の気の緩みと外出自粛の動きを見ることが目的ですので、常時その場所にいる「住民」については分析の対象外とし、「来訪者」のデータを対象としました。

また、平日は都内への通勤移動客が多く、休日よりも来訪者数が多くなることが考えられます。そのため、人々の動きを正しく見るために休日(土曜日・日曜日・連休)のデータのみを対象として分析を行っています。

 

しかし、サービス業種等、休日(土日・連休)中に仕事があり、止むを得ず外出しなければならない人々が多くいるため、土日・休日の来訪者を全てを、レジャー・余暇目的でのいわゆる「外出者」とみなすことは乱暴であるのは確かです。
総務省の実施している「社会生活基本調査」では、仕事に就いていない人も含めた人口全体として、平日に労働している人の割合は50.2%、土曜日に働いている人の割合は33.5%、そして日曜日が21.5%であることが示され、「土日休み」という考えが必ずしも全ての人々の生活を反映したものではないことが分かります。
(「平成28年度社会生活基本調査」調査票Bに基づく結果内、詳細行動分類による生活時間に関する結果「第1-2表〜第1-4表 男女,行動の種類別主行動の総平均時間・行動者平均時間・行動者率」から平日・土曜日・日曜日に有償労働を行なっている行動者率を参照しています)

 

本稿で扱うデータも、上記の仕事目的での外出者も2割〜3割程度含まれているはずで、「気の緩み」による外出者を適切に反映していない可能性はあります。
しかし、現在のようなCOVID-19の流行拡大が始まる直前の2月〜3月にかけての人々の外出自粛の動きを見るという意味では、本稿の分析にも一定の意義はあると考えます。

 

【3. 分析結果 Result】

花見自粛呼びかけの効果は限定的?「気の緩み」は3連休の前週から徐々に始まっていた

1つ目の問い「都知事による花見自粛の呼びかけ(3/4)以降、外出自粛は行われ続けたのか?」に対する考察を行います。
人々が「気の緩み」から外出自粛を解いてしまったのかを明らかにするためには、都知事による花見自粛要請(3/4)から3月3連休(3/20-22)にかけての外出自粛動向を見る必要があると考えます。
2月から3月にかけての休日(土日・連休)における都内への来訪者数の推移を以下に示します。

休日(土日・連休)の都内来訪者数の推移(2月〜3月) 2月から3月上旬にかけて減少していた来訪者数は3月3連休(3/20-22)で再び大幅に増加している。

休日(土日・連休)の都内来訪者数の推移(2月〜3月)

休日1日あたりの来訪者人数を見ると、2月当初に1日あたり約140万人であった休日の都内への来訪者数は、緩やかに減少しており、2月末時点では約123万人(2月当初比△12.14%)となっています。
そして、3/4に、東京都による花見自粛要請が行われた後は、更に減少して自粛要請直後の3/7-8には約117万人(△16.43%)となっています。

花見自粛要請直後(3/7-8)の減少率は前週に比べ△4.86%であり、2/8-9、2/15-16のような自然減少での減少率は△1.0%程度であったことを踏まえると、3/4の都知事による花見自粛の呼びかけは人々の外出自粛行動に対してある程度の影響はあったものと考えられます。

 

しかし、翌週の3/14-15には来訪者は再び、若干増加し、3/14-15では約120万人(前週比+2.17%)となっています。
(ちょうど天気が良く、3/14には都内で桜が開花したことも人々の外出を増加させた影響の1つかもしれません。)

上記の推移から、3/4の花見自粛の呼びかけは直後の3/7-8の休日には人々の外出を控えさせることに一定の影響を与えた可能性はあるものの、「気の緩み」と指摘されるように、翌週3/14-15や3月3連休(3/20-22)では、外出する人々が再び増加してしまったものと考えられます。


3連休期間中の外出者数は1ヶ月前に逆戻り、2月3連休とほぼ同じに。

また、2つ目の問いである「3連休(3/20-22)期間中に都内への来訪者が減少しているのか?」という点について考察を行います。

1つ目の問いを考察する中で、すでに一部言及してしまっていますが、3月3連休(3/20-22)期間中の都内来訪者については、明らかに増加していることが確認できます。
3/14-15時点で1日あたり120万人であった来訪者数は、3/20-22では約194万人と急増しています。(前週比+62.17%:約74万人増)
前週の3/14-15と比べても+62.17%ともなっていることから、3月の3連休(3/20-22)期間中に、都内への来訪者は減少しているものの、人々の間で、大規模な外出自粛という行動は実施されなかったと考えられます。

 

また、COVID-19の警戒感が現在ほど高くなかった2月3連休(2/22-24)では、都内への来訪者は1日あたり約203万人となっており、3月の3連休(3/20-22)の来訪者数は、2月3連休(2/22-24)の来訪者数と比べると、その差は85,500人減(△4.21%)と、2月と比べた3連休での外出自粛者は10万人未満、つまり20人に1人しか自粛行動を取っていないことが分かります。

3月3連休での外出自体はわずかに減少しているものの、1ヶ月前にほぼ逆戻りしてしまっていたと言えます。

 

さらに、都内23区別の来訪者数について詳しく見てみます。
2月3連休(2/22-24)の1日あたり来訪者を「1」とした場合の、それ以降の休日・連休における都内への来訪者数を都内23区別に示した表が以下になります。

2月3連休を基準とした東京23区別来訪者数の増減 3月3連休中の来訪者数は2月3連休とほぼ同水準にまで逆戻り。むしろ、杉並区等では2月よりも来訪者数が増加している。

2月3連休を基準とした東京23区別来訪者数の増減(図に誤りがあったため、4月18日修正)

自粛要請後の3/7-8、3/14-15では減少していた来訪者数は3連休(3/20-22)で、再び「1」に近い数字に戻り、また、杉並区・北区・板橋区練馬区・足立区・葛飾区では1を超え、2月3連休よりも来訪者が多かったことが確認できます。

 

 

 

【4. 結論 Conclusion】

3連休手前での「気の緩み」と多くの人々が外出してしまったのは多分、事実。

最後に、COVID-19の流行防止に向けた外出自粛要請が続く中で3月3連休(3/20-22)の時期に「多くの人々が『気を緩ま』せ、自粛要請がある中で外出してしまったのか?」を対象として
考察を行なってきた本稿の結論を示したいと思います。

まず、3連休の時期における人々の「気の緩み」については、2月から3月の休日・連休期間中の都内来訪者推移から、2月から3/4の自粛要請の直後まで減少傾向にあった来訪者数が、3連休の前週3/14-15及び3連休3/20-22にかけて再び増加に転じていることが分かります。
また、3月3連休中の都内来訪者数は、2月の3連休に比べて減少しているものの、大差がなく、多くの人々がCOVID-19の警戒感が強まる前の2月下旬と同じように外出していたことが明らかになりました。
このことから、自粛要請が続く中で、3連休手前での人々の「気の緩み」と多くの人々が外出してしまったということは事実であると考えられます。

 

一方で、今回の分析では、都内23区への「来訪者」というデータを扱っているため、分析の精度には限界があると考えています。
人々の「気の緩み」による外出をより正しく明らかにするためには、仕事を目的とした外出とレジャーを目的とした外出は分けて分析することが望ましいです。
今回のヤフー・データソリューションさんのデータではそこまで細かい情報は得られないため、他にもCOVID-19について調査されている方々の考察と組み合わせた分析を行なっていく必要があります。

また、個人的には、今後の感染拡大防止のためには「仕事目的ならば止むを得ない」といった奉公精神を好しとせずに、外出自粛を強く要請していく必要があると考えています。
今回データとして扱った「来訪者」数の推移が、仕事目的・レジャー目的に関係なく、大幅に減少していくようにしなければ、この感染拡大の流れを迅速に止めることは難しいのではないでしょうか。

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